うるしコラム

「透漆」の水分量はなぜ3%?

漆の種類について

 漆は使用用途によって「生漆」「透漆」「黒漆」、そして透漆に顔料を混合した「色漆」があります。これは日本工業規格(JIS規格)で分類されているものです。

 生漆は、漆描き職人が漆木を描いて漆樹液を採取したその原液を言います。この生漆の水分量は国産漆では17%前後、中国産漆では27%前後と言われます。いま漆描き職人が漆木を描いて樹液を採取している国産漆は岩手県浄法寺地域が有名です。漆掻き技術は世界無形文化遺産にもなっています。

 漆は、この「生漆(荒味漆)」を濾して「生漆(濾味漆)」にしてそのまま使用する漆と、生漆(濾味漆)を「なやし」「くろめ」して水分を除去して使用する「透漆」があります。一般的に「漆」はこの「なやし」「くろめ」をした「精製漆」を指します。精製漆には油を加えた「有油漆」や顔料を混合した「色漆」などがあります。また使用目的に合わせて「粘度や水分」を調整したものや、「混合物を入れた」漆があります。箔下漆や黒箔下漆、春慶漆、うるみ漆…などがあります。

「透漆」と含有水分量の関係

 精製漆の「透漆」の水分量は3%程度がもっとも良いとされています。3%が良いとされる理由は、漆の硬化メカニズムと関係しています。 漆の主成分のウルシオールは、ラッカーゼ酵素の働きで酸化重合して硬化します。 この酵素反応には適度な水分が必要で、水分がある事で酸化重合は促進されます。

 水分が少なすぎるとラッカーゼ酵素の働きが鈍く硬化時間が長くなります。多すぎると硬化後の塗膜に気泡や白濁が生じる事もありますが、硬化時間は短くなります。長年の研究や職人さんの経験値では2 ~4%程度の水分量が最適とされています。ただ、透明度が求められる透漆では3%前後が最適で良好な結果を示すとされています。

 3%前後の水分量では、ラッカーゼが最適な活性を示し、均一な重合反応が進行しますので、硬化過程での体積変化が最小限に抑えられ、クラックや歪みが生じにくいといわれています。また、硬化時の気泡発生を抑制できることも3%が経験的にも理論的にも最適値とされている理由の一つです。 湿度70~80%、温度20~25℃の環境下で、この水分量が最も安定した硬化を実現します。ただこの3%は基準値や品質評価によって決められているものではありません。漆研究者の長年の研究や漆職人さんの積み重ねられた経験値から編み出されたものと言えます。

 漆に関する論文は、大学の研究論文や化学会誌、塗料・色材協会誌などで「漆の硬化メカニズム」に関する研究論文が複数発表されています。 ただし、「漆の水分量3%が最適」とする明確な単一の理論や論文、理論的根拠は見当たりません。これは「漆の水分量3%」は漆職人の歴史的経験知と研究者の長年の科学的データーの蓄積による知見だからです。

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