うるしコラム

漆の「今」と、「これから」に向かう思い

このコラムをご覧になっている皆さまには、既にご存知の方も多いかと思いますが、日本国内で使われる漆はそのほとんどが中国産の漆です。国産漆はわずか5%程度にすぎません。

かつては日本全国に漆器の産地があり、漆器の産地が漆の産地でもあり、そこには漆描き職人がいて、漆の生産にも慣れていました。

日本全国の漆器産地

現在経済産業省が指定している伝統工芸品のうちで漆器産地に指定されているのは1府16県です。

北は青森県の津軽塗、秋田県の川連漆器、岩手県の秀衡塗り・浄法寺塗り、宮城県の鳴子漆器、新潟県の村上木彫堆朱・新潟漆器、福島県の会津漆器、神奈川県 鎌倉彫・小田原漆器、長野県 木曽漆器、岐阜県 飛騨春慶、石川県 輪島塗・山中漆器・金沢漆器、富山県 高岡漆器、福井県 越前漆器・若狭漆器、京都府 京都漆器、和歌山県 紀州漆器、山口県 大内塗、香川県 香川漆器、沖縄県 琉球漆器など。

どの漆器の産地も年々の生産量は低下しており、ある地域では後継者不足や販売量の減少、原料漆の価格高騰などから廃業に追い込まれているところも増えてきています。

国内で生産される漆とその用途

国内の漆の生産量は岩手県が最も生産量が多く1,5t~1,8t前後といわれています。次いで茨木県、栃木県などが続きますが、生産量は岩手県の20%にも及びません。
岩手県の漆の生産量は国内生産量の75%が占めており、その多くが岩手県二戸市浄法寺地域で生産されています(経済産業省統計調査より)。

この漆の大半は文化庁の重要文化財修復事業に使われています。(文化庁平成27年資料)。
文化庁は平成27年に「国宝・重要文化財(建造物)保存修理における漆の使用方針について」通知をだし、「国庫補助事業として実施する国宝・重要文化財(建造物)保存修理に使用する漆」は「国産漆を使用する」ように各都道府県に通達しています。

漆産業の衰退、そしてこれからの漆に求められるもの

生産量の75%を占める岩手県二戸市地域は、地域振興事業として漆描き職人の育成事業、漆木の植林育林事業にも力を入れ、国産漆の増産に力を入れています。

一方、中国産漆は年々その輸入量が減り、2023年はピーク時の10分の1まで落ち込んでいます。これは漆の消費量が減ってきた事、他の化学塗料に代わってきた事が主な要因です。

漆産業振興のためには、まず漆の消費量を増やす必要がある。私たちはそう考えています。
化学塗料に代わられてしまった漆のデメリットを補い、再び多くの人に漆を使っていただけるように。日々進歩を続ける現代の技術を用いれば、きっとそれができると信じています。

我々いわて漆テックが目指す目標の一つは、食洗器可・電子レンジ可漆や、従来の漆よりも耐久性や耐紫外線に優れた漆を、よりお客様がお求めやすくご提供することです。これにより漆の使用範囲が拡大し、今や一般的となってしまった漆器のイメージ「デリケートで扱いづらいもの」を払拭できればと考えています。

キーワードは漆の「高分散化」。

このキーワードをもとに日々、研究を進めています。その成果を皆様にお伝えできる日も近いかもしれません。

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