製法・基準

漆の光沢と艶について

漆職人さんや漆芸家さんから「もう少し艶が欲しい」とか「艶のないものにしてほしい」と言われることがあります。塗った後の塗膜が「滑らかで光り輝く」ような状態を「艶がある」と言い、また「艶のない」(艶なし)漆と言いますと、艶ありとは裏腹に塗膜表面が「マットな質感で落ち着いた雰囲気」で「反射感がない」ものをいいます。漆の世界ではこの「艶」を使い分け、商品や作品が作られています。

漆の世界では、「光沢」と「艶」、という言葉が使われますが、この二つの言葉はどのように違うのでしょうか。「光沢」は科学的な輝きを表し、「艶」は人間の感性による表現として使われます。光沢は計測機で測ることができますが、艶は計測ではなく使う人の感性によります。もともと漆職人の方は塗膜の質感を「艶」という言葉で表現していました。それが何時ごろからか光沢計が現れ漆塗膜を計測機で測るようになりました。

「光沢」は、物体の表面に光が反射することで生じる「輝き」です。それ故に光沢は反射が多ければ多いほど高くなります。光沢は精製の仕方(なやし)やその漆の性質によっても違いが出てきます。個々の違いにより塗膜の乾きが進むにつれ、輝きが鮮やかな漆もあれば、弱く感じる漆もあります。この輝きのことを「光沢」と言い「艶」と言われてきたようです。光沢と艶は同義語といわれ、漆の業界では使う人によって使い分けられてきました。

一般に製品の光沢の測定はISOで規格化された鏡面光沢度が用いられます。ISOにおける鏡面光沢度とは、特定の入射角からの光を物体表面に照射し、鏡面反射方向(正反対方向)に反射する光の量を測定することで、物体の光沢度を数値化したものです。 ISO規格では光沢度の測定に「20°」「60°」「85°」3つの入射角が定められており、測定する対象の光沢度に応じて「光沢度が高いものは20°、中程度のものは60°、低いものは85°」で測定、と使い分けられています。

光沢度の単位にはGUもしくは%が用いられ、これは、基準となる黒色ガラス板の反射率を100とした場合、それに対してどれだけ光沢があるかを数値化したものです。漆は粒子が小さいほど塗膜面が滑らかで光沢度が高く見え、粒子が大きいと塗膜面が荒く光が乱反射し光沢度は低く見えます

塗料において光沢は塗る物資の性質や、表面の滑らかさ、によって変化します。表面が滑らかな物資の表面では正反射が強く「光沢度が高い」といいます。反対に、表面がざらざらした物質の表面では反射光が乱反射して正反射は弱くなり「光沢度が低い」といわれます。

また漆は漆の粒子が大きいと塗った塗膜面に凹凸ができ、光の反射が乱反射して光沢が弱くなります。反対に漆の粒子が小さい程、塗膜面の凹凸が小さく、光の反射は正反射が強くなり、光沢が強くなります。

同じ生地(表面の滑らかさ)に塗る場合でも、光沢の高いもの(艶あり)を求めるか、と光沢の低いもの(艶なし)を求めるかで塗る漆は異なります。

光沢と艶は同義語として使われていますが、その関係性は次のようなものではないかと言われています。ただし、これは明確に定義されたものではありません。

  • 光沢度70%以上‥艶あり
  • 光沢度60%前後‥七分艶
  • 光沢度35%前後‥五分艶(半艶)
  • 光沢度15%前後‥三分艶
  • 光沢度5%以下‥艶なし

今回は漆の光沢と艶について解説させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?

当社では、漆の精製法によって「艶あり漆」「艶なし漆」を作ります。艶ありは、擂潰工程で粒子を細かくし、減圧蒸留装置で低温で水分を除去して精製します。艶なしは、擂潰工程を行わず、漆の粒子が大きいままの状態で減圧蒸留装置で低温で水分除去して精製します。できた漆は、いずれもラッカーゼ酵素の活性が高い状態の、艶あり、艶なしの「純漆」が作られます。光沢を出すための油性添加物等は入れない、艶あり艶なしの「純漆」を精製しています。

(2025年6月 いわて漆テック株式会社 及川秀悟)