製法・基準
漆の水分量はどのようにして測る?
漆の性質と水分量の関係
漆の水分量は漆の粘度の高低と硬化時間の長短に大きく影響を与えます。特に硬化時間は水分量によって決まります。漆職人さんや漆芸家の方からは良く「早く乾く漆が欲しい」とか「汁口」「粘度の軟い漆が欲しい」と言われます。早く乾くとか粘度が低いというのは漆の水分量の多少によります。
漆木から採取した生漆は中国産漆で27%~30%の水分を含んでいます。国産漆では15%~17%の水分を含んでいます。
生漆は、主成分のウルシオール(60%~80%)、含窒素物(2%~3%)、水溶性のゴム質(5%~7%)、ラッカーゼ酵素(0.2%)、そして水分(15%~30%)などで構成されています。
生漆に含まれている水分(15%~27%前後)を「くろめ」によって3%前後に除去 します。この「くろめ」によってできるのが水分量3%の「透漆」です。この透漆と顔料を混ぜたものが「色漆」になります。また漆に鉄粉を混合したものが黒漆です。
漆は、主成分のウルシオールが酸化重合して漆塗膜になりますが、この酸化重合を促進するのがラッカーゼ酵素です。ラッカーゼ酵素の活性が高いとウルシオールの酸化重合の促進は強くなり「早く乾く漆」という事になります。ラッカーゼ酵素の活性が低くウルシオールの酸化重合の促進が弱いと「乾きが遅い」漆となります。
「透漆」は、「水分量が多いと粘度が低く乾きの早い漆」になります。これはラッカーゼ酵素による酸化重合が促進されるためです。漆の硬化にはラッカーゼ酵素の活性が必要で、適度な水分があるとラッカーゼ酵素は活発に働き、ウルシオールの重合が促進されます。 その為「乾きの早い漆」となります。
「黒漆」は、透漆とは反対に「水分量が多いと粘度が高くなり乾きの遅い」漆になり、「水分量が少ないと粘度が低く乾きの早い」漆になります。黒漆は主に「鉄粉」 が混ぜられています。水分量が多いと、鉄粉粒子が分散しラッカーゼ酵素とウルシオールの接触バランスを崩し、また鉄分が酵素の働きを阻害する傾向があるために、「乾きが遅く」なるといわれます。
このように漆の水分量は、精製漆(透漆、黒漆、色漆)の性質に大きな影響を与えています。
漆に含まれる水分量の測定方法
漆の水分量測定で一般的に多く使われているのは「加熱減量法」(簡便法)と言われるもので、工業技術センターや研究機関などで行われています。原理は簡単ですので誰でも簡単に正確に水分量を測定することができます。
(※当社の奥州漆研究所では水分量測定はメトローム社のカールフィッシャー滴定装置で行っております。)
加熱減量法での水分量測定は次の手順で行います。
水分量計測手順(加熱減量法)
- 用具はホットプレートとアルミ箔皿、電子秤(1/100が測定できるとよい)を用意します。
- まず電子秤でアルミ箔皿の重さを計ります。
- 次にアルミ箔皿に漆を入れて電子秤で重さを計ります。(アルミ箔皿、漆込み重量) 漆の量は3g程度で測定可能です。
- 漆を入れたアルミ箔皿を熱くなったホットプレートに乗せます。アルミ箔皿の漆が泡立つまでよく見ています。
- アルミ箔皿の漆の泡立ちが無くなり漆が透き通ったらホットプレートからとって 重量を計ります。(アルミ箔皿、漆の込み重量)
※テストは3回行って平均値を測定値とする。
測定値から水分量及び水分含有率を計算する方法
- 3.-2.=漆の重さ・・・(水分量を計る漆の重さ)
- 3.-5.=水分の重さ・・・(アルミ箔皿の漆を含む加熱前の漆の重量と加熱後の重量の差)
- B(水分の重さ)÷A(漆の重さ)×100=水分含有率%
漆の水分量の測定は、微量(3g程度)の漆でこのような簡単な測定道具を使って 行うことができます。品質の良い塗りやすい粘度、塗布の安全性と作業効率の向上、上等な作品・製品に仕上げるためには使用する前に水分量を計測することは とても重要です。
(2026年4月 いわて漆テック株式会社 及川秀悟)
